足利市における【事故物件の告知】今後どうなる??



物件内において自殺や孤独死、殺人事件などが起きた場合、いわゆる“事故物件”として扱われ、新たな買い手や借り手がつきにくい事態になりますが、これまで、この“事故物件”についての明確な定義付けやルールはありませんでした。
そのため、特に賃貸物件においては、孤独死による事故物件化を防ぐ意図から、単身高齢者の入居が断られるケースも多発していました。

そこで、国交省は、“事故物件”の判断基準を示すことにより、売買や賃貸における取引の安定化・トラブル防止を図ることにしました。

今回は、足利市内の不動産売買における事故物件の告知事項について掘り下げていこうと思います。

 

 目次

  1. 告知義務とは何か??
  2. 国土交通省による「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」とは
  3. ガイドラインの重要ポイント
  4. 人の死はすべて「瑕疵」なのか??
  5. まとめ

| 告知義務とは何か?? 


中古の不動産なら「屋根が老朽化して雨漏りがする」「扉がガタついて開きづらい」などの不具合や欠陥がある可能性もあります。

このような不動産の不具合や欠陥のことを「瑕疵(かし)」といい、売却時には不動産の瑕疵を買主へきちんと伝えなくてはいけないという「告知義務」があります。

「相手は不動産の不具合に気づいていないから、黙ってこのまま売ってしまおう」というわけにはいきません。

傷や汚れのすべてを告知しなくてはいけないわけではないですが、生活に支障があるレベルの不具合については告知義務があります。

 

告知義務のある不動産の瑕疵は4種類です。

 

①物理的な瑕疵 

不動産の物理的な損壊や欠陥で、生活に支障があるレベルのもの。

  • 雨漏り
  • 白アリ被害
  • 壁のひび割れ
  • 地盤沈下
  • 土地に廃棄物が埋まっている など

 

②環境的瑕疵 

建物に欠陥がなくても、日常生活に支障がでるような周辺環境の問題があるもの。

  • 近隣の工場の作業音が響く
  • 近所にゴミ屋敷があり悪臭がする
  • 新幹線が近くを通るため振動が響く  など

 

③心理的瑕疵 

購入者が心理的に不快、不安な思いをするもの。

  • 過去に自殺や他殺があった事故物件
  • 近隣に暴力団事務所がある
  • 隣に火葬場がある

 

④法律的瑕疵 

建築基準法や都市計画法などで、不動産の使用や建築が制限されているもの。

  • 建物の高さが制限されてるエリアで、3階建てにすることができない
  • 建築不可物件のため増改築ができない

 

 

不動産にこのような瑕疵がある場合は、買主へ必ず告知しなくてはいけません。

 

また、4つの中でとくにトラブルになりやすいのは「心理的瑕疵」です。

心理的な瑕疵は目には見えないうえ、人によって気になる・気にならないの基準に差があるからです。

 

自殺や事故、事件などがあったいわゆる「事故物件」は、一般的に自殺や他殺があってから6年程度経過するまでは告知が必要といわれています。

事故物件を購入した人がさらに売却するときや、建物を取り壊して不動産として売却する際には告知不要とされています。

 

 

| 国土交通省による「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」とは 


2021年10月8日に国土交通省から「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」が発表されました。

5月に発表された「ガイドライン(案)」に対する一般からの意見を受け、修正したものです。

ガイドラインの中で、人の死に関する事案が「取引相手の判断に重要な影響を及ぼす場合」は、告知するのが原則としつつ、入居者が病気や老衰による「自然死」の場合、あるいは、階段での転落死や入浴中の溺死など「不慮の死」の場合は、原則として、不動産仲介業者が買主側や借主側に告知する義務はないと明記しました。

なお、このガイドラインの対象となる不動産は、マンションやアパート、一戸建てなどの「住宅」となります。

 

※ このガイドラインに関する国土交通省のホームページはこちら ↓
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html

 

 

|ガイドラインの重要ポイント 


 

①賃貸借取引及び売買取引において「自然死」又は日常生活の中での「不慮の死」が発生した場合 

老衰、持病による病死など、いわゆる「自然死」については、自宅における死因割合のうち9割を占めると言われており、自然死は当然に予想されるものであるので、これを告知する義務を課さないことにしました。

また、自然死の他、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、自然死と同様に、原則として、これを告げなくてもよいものとしました。

ただし、自然死や不慮の死の場合であっても、当該居室内において発見が遅れ長期間にわたって放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、告知義務が生じるものとしました。

 

②賃貸借取引において、①以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった①の死が発覚して、その後概ね3年が経過した場合

上記①以外の死とは、自殺や他殺を想定していますが、自殺や他殺の場合であっても、その発生から3年が経過すれば、「賃貸借取引」に限っては告知義務を課さないものとしました。

 

 

|人の死はすべて「瑕疵」なのか?? 


告知にあたっては「亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要がある」としています。

具体的には「氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない」とされています。

亡くなった方の名誉を傷つけることのないよう配慮が求められているのです。

「ガイドライン(案)」に対しての一般の意見の中には、「人の死は当然あることで嫌悪感をもたないような一文を添えてほしい」「自死のあった物件を心理瑕疵物件とすることは、差別・偏見を助長する」という意見がありました。

誰にでも起こりうる自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)があった物件を、一律「瑕疵物件」とし、お化け屋敷扱いし、忌み嫌うべきものとしていることは、まさに「偏見を助長する」ものだと考えられます。

 

 

| まとめ 


ある住居で人が亡くなったとしても、気にしないという人も少なくないと思います。

現にハウススタジオでは、心理的瑕疵のある物件をこれまで複数件販売させて頂きました。

しかし周りから「事故物件」「心理的瑕疵物件」というレッテルが貼られているものに住むことは誰しもが躊躇するかと思います。

それは、周りから、「事故物件に住んでいる人」という目で見られてしまう事が原因と言えます。

これは需要者側の物件選択の幅をかなり狭めることになります。

一方、供給者側は、物件を敬遠する需要者が出ることで、価格・賃料を下げなければ売れなくなる、貸せなくなるといった問題も出てきます。

 

「本人が嫌だと思うからその物件を選ばない。」

 

これであればなんの問題もないと思います。

しかし、「皆が嫌がる物件だから……」というある種の同調圧力により優良な住宅が利用されないのは社会的な損失でしかありません。

足利市にも多くの優良住宅が、このような問題を抱えています。

ハウススタジオでは、このような物件が、再度利用価値を認められ、一件でも多く活用されるようになるよう、今後宅建業をして参ります。

今回のガイドラインをきっかけに、無意味なレッテル貼りがなくなることを期待したいと思います。

最後までお読みいただき、有難うございました。

少しでも参考になれば幸いです。